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戦後の近代家族とモダンリビングを基調とした住まいは、社会からの解放と隔離を志向し、家族や私生活に傾斜した。高度経済成長による人口増加は、深刻な住宅不足を招いたため、そうした住宅が標準化され大量供給され、現在もその影響は大きい。コロナ禍は、こうした経緯の中で対立的に捉えられてきた〈社会〉と〈家庭〉を再び出会わせる契機となり、住まいの設計の大きな前提を問い直すきっかけになるのかもしれない。
当物件は、コロナ以前に竣工しているものであるが、戦前の町家の形式を再考して、家庭と地域社会をつなぐ仕組みや、ルーズな空間構成と多用途性を設計に取り込んでいる。結果的に、コロナのステイホーム期も破綻なく過ごすことができた。
また、この場所に建て、住む意味を原初に立ち返り実感できないかと考えて、地域の卓越風である海陸風を取り込むことを目指して建物の断面形状や窓配置を検討している。自然環境の大きな循環の中に住まいの場を設える豊かさを実感することを目指した。
※ 1、2 通風時の住宅のCFDシミュレーション 西潟佑太郎
用途:専用住宅|所在地:新潟県上越市|竣工:2019年|新築|延床面積:176.86u|協同設計:棚橋麻実