「コンテナによる場所づくり」       2016/8/13



 「コンテナ」という言葉が、皆様に関心を持って頂くきっかけとなると共に、ご心配もおかけいたしました。
私たちは以前から、「コンテナ」建築の持つ、移設可能性やシンボル性に、得体の知れない魅力と可能性を感じておりました。


現在の町を構成する、木造や鉄筋コンクリート造、鉄骨造の建築物は、19世紀にはすでに存在していましたが、「コンテナ」建築のような、建築の考え方〈ユニット工法、プレファブ工法、移設可能性〉は、20世紀の中頃に出てきた新しいものです。古い建築で解けない新しい問題も、新しい「コンテナ」建築ならば解けるのではないかという期待がありました。 


    



 「フルサット」は、一つの商業施設というよりは、横丁のような小さな町を目指していました。吉祥寺にある「ハモニカ横丁」や、新宿にある「おもいで横丁」のように、周りの商業施設には無い、独自の魅力が創出されるような空間を目指していました。

誰かが大きな施設を建てるのではなく、小さな店舗が連なって自然に町が出来る。始めから最終的な完成形があるのではなく、周りの町の発展と共に徐々に成長していく。そのような場所を目指していました。これらの想いに合致するものが「コンテナ」建築だったと言えます。 


    



  また、こんな事も考えていました。20世紀の建築は、潜在的に、地域性や場所性を無くしてしまう力を持っていました。その反動として、失われた地域性や場所性を回復しようとする力が生じて、せめぎ合っていたと言えます。

 失われた地域性や場所性を回復するために、例えば高田駅のように、「歴史的なデザインの引用」が試みられ、高田小町のように、古い建築物の保存活用が行われてきました。

 こうした20世紀の歴史を踏まえ、21世紀にできた上越妙高駅前という新しい町で、建築デザインは何ができるのか考えた時に、20世紀半ばに発明され、物流に革命を起こし、地域性や場所性の喪失に拍車をかけたであろう、グローバル経済の基礎をつくった「コンテナ」という20世紀を象徴するような工業製品をあえて使い、地域性や場所性を表現する挑戦を考えました。 


       



 具体的には、雁木のある商店街のコンセプトを引き継いだ、コンテナ横丁をつくるという挑戦です。雁木からは二つのコンセプトを引き継ぎました。
一つは私有地を公に解放するというコンセプトです。フルサットでは、雁木下の空間やコンテナとコンテナの間の空間が、お店同士で共有されていると同時に、フルサットの外からも入りやすいよう解放されております。この豊富な外部空間の有効活用がフルサットの特長であり可能性を生み出します。

 もう一つは、雪と関わり、特徴的な空間を生み出した点です。本家の雁木のある町では、雪を排除する20世紀的な解法によってその特徴は失われておりますが、フルサットではあえて雪に埋まる状況を作り出しております。かまくらや、雪のトンネルをつくるなど、雪に親しむ21世紀的な解法で雪の魅力を発見できるような場所になることを望んでいます。